J・M・シング『アラン島』


6-9-09
 
アイルランドの作家、シングのアラン島紀行。
 
小さい島での質素で、昔ながらの素朴な暮らしに惹かれたシングは、何年にもわたって、島に通い、数週間ずつをすごしている。
島特有のモカシン、てこぎのボート、泥炭、塩をふくんで乾かない衣服、痩せた家畜、ケルプ。寡黙で、しかし、激情を内に秘めてひっそり暮らす人々。
島での生活の描写のあい間に、島の老人の語る物語がはさまれ、紀行文とお話のミルフィール仕立て(?)になっていて、飽きない。
知らない土地、知らない時代、知らない風俗なのに、行間に画像をうかべられる楽しさもある。
 
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年前のアラン島が、そんなふうに、身近に、いきいきして感じられるのは、訳が新しいおかげでもあるとおもう。岩波文庫にも、はいっているらしいけれど、そちらは見ていないから、わからないが。
 
みすず書房の本って、カバーにポリプロピレンのコーティングをかけないから、紙の感触が、手に持っていて心地よいのよね。 
          
島の物語から。
雨宿りさせてもらおうと家をのぞくと、死んだ夫を前に妻がすわっている。
夫の死を知らせにいく間、留守番をたのまれ、死体のそばにいると、むっくりおきあがった。「妻の不貞をあばくためだ」と夫はいう。そして、また死んだふり。
そこに、妻が、若い男を連れて戻ってくる。
妻と男が眠ったところを、夫は起きあがって、男を刺した!
 
おもしろい!と、わたしは喜んで、4コマに。